【報告】四国西予ジオミュージアムコレクションを紹介

更新日:2022年11月28日

4月に開館した四国西予ジオミュージアムの展示資料を紹介します。毎回、展示資料1点を取り上げ、過去や秘密を掘り下げていきます。この記事を読めば、四国西予ジオミュージアムをもっと楽しめるかも。

更新情報

11月28日:コレクション(6)を掲載しました。
10月11日:ページを公開しました。

コレクション(6):チャボホトトギス

チャボホトトギスは山地に生えるユリ科の植物です。高さは大きくても10cm程度で、地表にへばりつくような格好をしています。葉は平たくて細長く、表面に模様があるのが特徴です。9月頃に黄色い花を咲かせ、花びらの内側には斑点があります。この斑点が鳥のホトトギスの胸の模様に似ていることからこの名がつきました。市内では野村町の桂川渓谷などで観察することができます。

平成26年に発行された県レッドデータブックによるとチャボホトトギスは「絶滅危惧2類(VU)」にあたります。すくにというわけではありませんが、地域で適切な保全をしないと絶滅する恐れがあります。

チャボホトトギスは森林伐採や園芸用の採取で数を減らしています。もし山道を歩いていて見かけた際は傷つけないように観察してください。

チャボホトトギスの模型はジオミュージアム常設展示室内の肱川上流エリアに展示しています。

チャボホトトギス

コレクション(5):イシマテガイ(うど貝)

明浜町高山地区では、イシマテガイ(地元では「うど貝」と呼ばれる)が浅瀬の石灰岩の岩礁に穴をほって棲み着いています。殻の大きさは3~4cmの細長い楕円形の二枚貝です。これらは軟体部から酸をだして石灰岩を溶かして穴を空けてそこに入ります。

高山地区では酒蒸しや味噌汁にして食べるとのことです。本州以南で普通に見られる貝の一種ですが、石を割って取り出す手間や鮮度の問題から市場に出回らず、食べる文化は国内でも沿岸部の限られた地域で見られます。

高山地区は石灰岩が多く分布する地域で、かつて石灰産業で栄えました。地元の賀茂神社に奉献した常夜燈にはうど貝が穴を空けた石灰岩が使われています。「うど貝を食べる」という文化も、このように石灰岩で生業と文化を築いてきた高山の人々の暮らしの中で育まれ、現在も残っているととらえることができるのではないでしょうか。

イシマテガイはジオミュージアム常設展示室内の北部宇和海エリアに展示しています。

うど貝

コレクション(4):中津川のトゥファ

城川町古市には「中津川のトゥファ」と呼ばれるジオサイトがあります。「トゥファ」とは淡水中にできる、小さな穴がたくさん空いた石灰質の堆積物のことです。ラテン語で小さな穴の空いている白い石を意味します。

トゥファは川の源流にある石灰岩の石灰成分が水に溶け、流れた先の河川にいるシアノバクテリアが光合成する際に石灰分を急速に沈殿させることで出来上がります。同じ石灰岩の堆積物である洞窟の鍾乳石が1cm成長するのに、100年~数百年かかると推測されているのに対し、トゥファは1年でおよそ1cmの成長をするなど、成長速度がとても速い堆積物であることが知られています。植物の根に付着・堆積することもあります。

中津川のトゥファは川沿いに全長380m、幅10mの範囲で分布し、その大きさは日本でも最大級です。西予市では平成18年に市の天然記念物に指定しています。

中津川のトゥファは常設展示室「西予ジオミューズ」内の黒瀬川エリアに展示しています。

中津川のトゥファ

コレクション(3):大和田の三葉虫の復元図と復元模型

三葉虫は、昆虫やカニなどと同じ節足動物の仲間で、海に棲んでいた生き物です。体の真ん中と横腹の側部の3つに分かれることから、その名前がつきました。およそ5億4000万年前から地球に出現し、さまざまな種類の三葉虫が栄えましたが、およそ2億5000万年前に絶滅しました。

大和田では二種類の三葉虫の化石が1950年代に見つかっています。この化石は、かつての研究者などが持ち帰ったため、市内にはありません。そこで、当時の化石の写真と特徴が書かれた論文から、復元図と復元模型を制作し、ジオミュージアムで展示しています。

県内で三葉虫の化石が発見されたのは大和田だけです。化石の発見場所は、道路工事で埋まってしまいましたが、同じ地層は他の場所にも分布していると予想されます。もし似たような形の石を拾ったら、それは三葉虫の化石かもしれません。

三葉虫の復元図と復元模型は常設展示室「西予ジオミューズ」内の肱川上流エリアに展示しています。

復元模型
復元図

コレクション(2):世界最古の岩石「アカスタ片麻岩」

この石は「アカスタ片麻岩(へんまがん)」といい、およそ39億6000万年前にできた岩石であることが年代測定から分かっています。一見、何の変哲もない石に見えますが、現在発見されている岩石の中では最も古く、とても貴重なものです。

片麻岩は、形成された時と異なる温度や圧力下に長い間置かれて、構成する鉱物の種類や組織が変化した「変成岩」と呼ばれる岩石の一種です。砂岩や泥岩、チャートなどが地下でマグマの影響を受けて高温にさらされることで形成されます。

アカスタ片麻岩の産地はカナダのアカスタ地域。この資料は、城川地質館の建設時に神奈川県立生命の星・地球博物館から寄託を受けました。博物館同士の交流を通じて収集や展示を行うことも博物館の活動の大切な使命です。

アカスタ片麻岩は常設展示室「西予ジオミューズ」内の入り口付近に展示しています。

アカスタ片麻岩

コレクション(1):田穂の石灰岩

四国西予ジオミュージアムの貴重な資料といえば、まずアンモナイト化石が入った田穂の石灰岩が挙げられます。

城川町田穂地区の石灰岩からアンモナイトが発見されたのは1923年のこと。鬼北町出身の地質学者・大野作太郎さんによって初めて発見されました。アンモナイトが生きていたのは、およそ2億5000万年前の中生代が始まる時代です。この時代のアンモナイト化石は世界的にも珍しく、化石を含んでいる田穂の石灰岩は県の天然記念物に指定されています。さらに、付近の石灰岩からは古生代末の化石(コノドント)も発見されています。田穂のコノドントは近年急速に研究が進められており、当時の地球環境を知る重要な手がかりです。

田穂は古生代と中生代の境界が残る重要な場所であり、石灰岩は地球上で古生代末(ペルム紀)に起こった生物大量絶滅時代の記録を今に伝えています。

田穂の石灰岩は常設展示室「西予ジオミューズ」内の黒瀬川エリアに展示しています。

田穂の石灰岩

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愛媛県西予市城川町下相945番地
電話:0894-89-4028
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