西予市の暮らしを時代、地域別に紹介-古墳時代(13)
写真の資料は、西予市宇和町明石にある明石古墳という古墳から出土したとされる蕨手刀です。全長43.7センチ、刃の長さ31.3センチでほとんど反りをもちません。この刀には鍔や足金具、菊座といった青銅製の装具が残っています。刀や足金具の形状から、古墳時代も終末の7世紀末ごろのものと考えられています。
この資料を含め、西日本では奈良県、島根県、山口県、徳島県、福岡県、熊本県、鹿児島県から8点の蕨手刀が見つかっています。これらの蕨手刀が出土した遺跡は、遺跡が集中する中心地域というよりは周辺地域であったり、遺跡の周囲に同じ時期の遺跡が見られない地域といったような法則性があることが指摘されています。こうしたことから西日本で蕨手刀が出土する遺跡は、新興勢力と関連する性格を持つといわれています。
ひるがえって明石古墳が所在する田之筋地区を見てみると、やはり古代以前の遺跡は非常に限定的で、石城や中川のように古墳時代前期から古墳が築かれる地区と比べると後進的です。しかも明石古墳以降、須恵器を生産した福吉窯跡のような遺跡が出現します。つまりそれまでの宇和盆地の勢力とは異なる新たな勢力が蕨手刀を所有し、この地域に進出したのではないかと考えられるのです。
(参考:垣見奈緒子2009「西日本における蕨手刀-明石出土の蕨手刀の評価をめぐって-」『宇和盆地の古代文化研究1西ノ前遺跡・福吉窯跡発掘調査報告-』西予市教育委員会)
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更新日:2023年05月17日