農山村の祈り
当市の山間部では、旧道沿いの村境に、辻堂が設けられています。旅行者や通行人に茶の接待を行うことから主に茶堂と呼ばれ、念仏や虫送りなどの年中行事でも利用されています。土佐では、16世紀末の『長宗我部地検帳』にまでさかのぼることができるとされています。伊予では当市の野村、城川、旧河辺村、旧肱川町、旧大洲市などの山間に多く、旧道沿いに分布しています。
近代、城川の茶堂では、旧暦7月を中心に行き交う行商人や駄賃持ち、一般の通行人、遍路などに対して、湯茶のほか大豆の煮もの、梅干し、漬物、炒り豆、もち米を炒ったものなどで接待が行われました。また茶堂は、実盛送り(虫送り)や念仏などの拠点でもあり、農作業の休憩や情報交換の場でもあったようです。しかし、道路整備や自動車の普及とともに茶堂での接待は廃れ、人口減少や後継者不足で年中行事も存続の危機にあります。茶堂自体も瓦葺きへ変更するケースが見られますが、茶堂は山村景観を構成し地域の歴史や民俗を伝えるものであることから、茅葺き茶堂を残そうとする取組があります。
花取り踊りは、土佐から伊予へ伝わった芸能の一つで、現在は野村町岡成と城川町下相に残されています。このほか当市山間部には、天明4年(1784)以来守られ民間の講行事を統合した城川遊子谷の神仏講の習俗、土居の御田植行事、三滝神社の春季例祭に奉納される窪野の八ツ鹿踊り、楽念仏(念仏踊り)など、独特の年中行事、伝統芸能が数多く遺されています。このほか、嘉永5年(1852)の大火を受け火鎮を祈願した乙亥大相撲は、戦時中も絶えることなく毎年開催されています。
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更新日:2025年03月20日