市指定 木造薬師如来立像(山田薬師)-

更新日:2018年07月06日


よ み:もくぞうやくしにょらいりゅうぞう

所在地:西予市宇和町西山田

所有者:山田薬師

指定年月日:昭和58年12月9日


 

像高101.8センチメートルの等身を凌駕する像でありながら、両腰脇を含めた幹部を一材から彫成する大きな木取りである。像底・背中から内刳し、背中に蓋板をあてる構造とともに、平安時代前半期の作品に顕著な特徴といいうる。重厚感のある体型も同前である。その一方、面部の表情は穏やかで、衣文(着衣のひだ)も形式的に整い、かつ浅めに刻まれる。このような諸点を勘案すれば、その制作期は10世紀に求めるのが妥当であろう。

なお左手を仰掌させ薬壺をのせるのは薬師如来の通形だが、右手を施無畏印(掌を前に向けて立て、おおむね五指を伸ばす印)とせず、垂下して脚上で仰掌する点は、薬師如来像の形相として特異である。わずかな類例に山梨・大善寺の薬師三尊像の中尊(重要文化財、九~十世紀)がある。同像は右掌を脚に伏せる印だが、右手を垂下させるという点では山田薬師像に通ずる。ただし大善寺像の右手肘から先は後補と思われ、当初からそのような印相であった確証はない。また山田薬師像についても同じく右手前膊の保存状態には検討の余地があり、これも当初からの印と決めることは難しい。

以上のような課題はあるものの、脚部の衣文形式や正面胸回りの襟の波状衣文など、典拠となった図像の存在が推測され、平安時代中期にさかのぼる密教的な尊像と位置づけることが可能である。そのような意味において、当地方における仏教尊像として最も重要な作例のひとつといえよう。今後、充分に保存の手を講じてゆくべき貴重な文化財である。

昭和39年に修理が行われたことが、新補台座裏に打付された銅板銘札によって知られる。

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